フリーランス(個人事業主)や中小企業経営者の方は、事業が軌道に乗っていたとしても、取引先の倒産というリスクを抱えています。
万が一、取引先が倒産し、売掛金の未回収が発生してしまうと、資金繰りが悪化し、連鎖倒産や経営難に陥ってしまうというケースも少なくはありません。
経営セーフティ共済は、このような不測の事態に陥った場合に、借入ができる制度となっております。
また掛金が全額損金として処理されるので、節税効果が非常に高く、多くのフリーランス(自営業者)や中小企業経営者の方が加入しております。
そんなメリットが大きい経営セーフティ共済ですが、実は注意しなければいけない点もあります。
そこで本記事では、経営セーフティ共済の概要と、メリット・デメリットについて分かりやすく解説していきたいと思います。
経営セーフティー共済とは?
経営セーフティ共済はどのような制度なのか
経営セーフティ共済(正式名称「中小企業倒産防止共済」)は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しており、昭和53年4月にスタートした歴史のある制度です。
事業が軌道に乗っていたとしても、取引先が倒産する事態にいつ遭遇するか分かりません。取引先が突然倒産してしまうと、資金繰りが悪化し、最悪の場合、倒産する可能性もあります。
経営セーフティ共済は、このような連鎖倒産を防ぐことを目的としており、取引先が倒産してしまった場合に、共済金の貸付を受けることができる制度となっております。
経営セーフティ共済に加入できる人
経営セーフティ共済に加入できるのは、
- 個人事業主
- 企業
- 組合(一部)
となります。
一年以上継続して事業を行っている事が加入の条件となり、「資本金の額もしくは出資の総額」、「常時使用する従業員数」いずれかの基準を満たしてなけばいけません。詳しくは、加入資格|経営セーフティ共済(中小機構)をご確認ください。
[box04 title=”個人事業から法人成りした場合”]法人を設立してから1年未満の場合でも、個人事業として開業して現在に至るまで、1年以上経過していれば加入することができます。[/box04]経営セーフティ共済の掛金
経営セーフティ共済の掛金は月5,000円~20万円の範囲(5,000円単位)で設定することが可能で、最大で800万円まで積み立てを行うことができます。
また掛金の増額・減額(条件有)が可能となりますので、自身の経営状況に応じて、掛金の変更をすることが可能です。
経営セーフティー共済のメリット
節税対策になる
経営セーフティ共済は、連鎖倒産を防ぐことを目的としておりますが、税負担が軽くなるといったメリットを持ち合わせています。
掛金は全額が損金または必要経費に算入することが可能です。掛金総額の上限は800万円ですので、毎月20万円を払い込んでいたとしても、3年4ヵ月は税制面の優遇を受けることができます。
節税を行いながら貯金ができるというのが最大の特徴です。
取引先が倒産した場合に融資が受けられる
経営セーフティ共済は、取引先が倒産し売掛金の未回収が発生した際に、無利子・無担保・無保証人で融資を受けることが可能です。
融資額は、回収困難となった被害額と掛金総額の10倍に相当する金額のいずれか小さい方の額となります。積立上限の800万円の積み立てを行っていれば、最大で8,000万円の融資を受けることが可能です。
また6ヵ月間の据置期間が設けられているので、余裕を持って返済ができるようになっております。
※倒産日から6ヵ月以上経過している場合は対象外となります。
※夜逃げは倒産に含まれません。倒産の定義は共済金について|経営セーフティ共済(中小機構)をご確認ください。
事業資金の調達にも利用できる
経営セーフティ共済は、取引先が倒産した際に、融資を受けられるのが特徴です。しかし、取引先が倒産していなくても、解約手当金の95%の範囲内であれば資金調達として利用することも可能です。
利息は年0.9%発生しますが、取引先が倒産した場合と同じ無担保・無保証人で融資を受けることができます。ただし、一時貸付になりますので、返済期間は1年で一括返済となります。
返済期日を過ぎてしまうと年14.6%の違約金が発生しますので注意が必要です。
解約時にお金が戻ってくる
経営セーフティ共済は、いつでも解約をすることが可能で、解約すると解約手当金を受け取ることができます。
40ヵ月以上積立を行っていれば、返戻率は100%となります。掛金を損金として計上することができて、さらに掛金全額を受け取ることができます。
ただし12カ月未満の解約は掛金が1円も戻ってこないので注意してください。また納付期間と解約の理由によって支給率が変わりますので、詳しくは一時貸付金について|経営セーフティ共済(中小機構)をご確認ください。
解約後に再加入することも可能
経営セーフティ共済は、解約しても加入条件を満たしていれば再加入が可能です。解約と加入を繰り返すことで、継続して節税効果を得られることができます。
経営セーフティー共済のデメリット
解約手当金を受け取るときに課税される
経営セーフティ共済の掛金は全額損金の扱いになるので、年間で最大240万円の節税が可能です。
しかし解約して解約手当金を受け取るときは、法人の場合は益金、個人の場合は事業所得の扱いとなり、課税対象となります。相殺できる損金が計上できなければ、税金を払わなければいけません。
そのため経営セーフティ共済は解約するタイミングが非常に重要です。
例えば、大きな赤字が出そうな年や退職金の支払いを行う年などに解約して相殺させるなどの対策が必要です。
共済金の貸付は最終手段だと考えよう
先の解説で経営セーフティ共済は、取引先が倒産した場合に、無利子・無担保・無保証人で融資を受けることが可能と説明しました。
しかし、無利子・無担保・無保証人で融資が受けられる代わりに、借入金の1割に相当する金額が掛金から消滅されます。
例えば積立総額が満額の800万円の場合に、8,000万円の融資を受けると、借入金の1割に相当する800万円が消滅してしまいます。無利子で融資を受けられるとはいえ、条件はかなり悪いです。
そのため取引先が倒産し、経営セーフティ共済を利用して融資を受けるのは、最終手段だと考えておきましょう。
まとめ
経営セーフティ共済は、取引先の倒産時に融資が受けられて、掛金が全額損金になるので節税になり、さらに解約後も解約手当金を受け取れるといったメリットがあります。
しかし融資を受けると掛金が一部消滅したり、解約手当金を受け取り時に課税されるといった点には注意が必要です。
経営セーフティ共済の加入を検討されている方は、本記事で解説したメリット・デメリットを理解したうえで検討してみてください。