病気やケガにより、病院を受診した際の医療費は、年間で計算すると高額になってしまうこともあります。
そのようなときに知っておきたいのが医療費控除。医療費控除とは、医療費が一定の金額を超えた場合に、医療費の負担を減らすことができる制度です。
しかし医療費控除とは具体的にどのような制度なのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、医療費控除を知らないという方でも理解できるように、分かりやすく解説していきたいと思います。
医療費控除とは?
医療費控除とは、1年間で支払った医療費の合計金額が一定の基準を超えた場合に、課税所得から控除できる制度となります。
支払った医療費の一部が返ってくると勘違いされている方が多いですが、課税所得から医療費の一部を控除したうえで(引いたうえで)税金を計算し直すというものです。
そのため、会社員の方であれば給与から天引きされた所得税の還付金を受け取ることができます。個人事業主(フリーランス)の方であれば納税額を抑えることができます。
[box04 title=”課税所得とは”]収入から控除(経費)を差し引いた金額のことです。課税所得に対して税金が計算されます。[/box04]家族全員が控除対象
医療費控除が受けられる対象者は、本人だけでなく家族も含まれます。
同一生計の家族であれば、必ずしも同居をしている必要はありません。例えば、両親から学費や仕送りをもらっている大学生や、子供から医療費や生活費をもらっている両親なども対象になります。
そのため本人だけでなく家族の医療費の領収書も保存しておくようにしましょう。
医療費控除の対象となる医療費の範囲
先の説明で支払った医療費が課税所得から控除されると解説しました。
しかし、病院で受診した医療に関わる全ての費用が医療費控除の対象となるわけではありません。つまり医療費控除の「対象になる費用」と「対象にならない費用」がある点に注意しましょう。
医療費控除の対象か対象外かを判断するには、「治療」というキーワードが重要となります。
治療のために行われた医療行為に対して支払った費用が医療費控除の対象となります。例えば病気やケガをして医療機関を受診した際の治療費や薬代などが挙げられます。
対して、治療を目的としていない医療行為は医療費控除の対象外となります。例えば予防接種や美容を目的とした歯列矯正などは医療費控除として認められません。
医療費控除の対象になる費用と、対象にならない費用の代表的な例を下記にまとめますので、参考にしてみてください。
医療費控除の対象になる費用
- 病院での治療費や診療費
- 医師の処方箋をもとに購入した医薬品の購入費用
- 入院した際の部屋代や食事代
- 医療用器具の購入代
- 虫歯の治療、治療を目的とした歯列矯正やインプラント
- 治療のためのマッサージ指圧、はり、きゅう
- 妊娠中の出産費用や不妊治療
- 病院に行くときの交通費
代表的な例を挙げましたが、治療を目的とした医療行為に支払った費用が医療費控除の対象です。他にも分娩を目的とした定期健診代や出産費用も含まれます。
医療機関で支払った金額の他にも、通院の際に発生した交通費も医療費控除の対象となります。
医療費控除の対象にならない費用
- 入院した際の差額ベッド代
- 眼鏡やコンタクト代
- 美容整形
- 人間ドック、健康診断、予防接種
- 治療を目的としないマッサージ施術費用
- 健康増進や美容目的で購入したサプリメントやビタミン剤
- 自家用車で通院した際のガソリン代や駐車料金
治療目的ではなく、美容や予防を目的とした医療行為は対象外となります。また自家用車を使用した際のガソリン代や駐車料金も含まれないので注意しましょう。
※医療費控除の対象は時代とともに変化します。申請の際は、下記リンクから最新の情報を確認することをおすすめします。
10万円を超えた金額が控除になる
医療費控除は、年間の医療費の合計金額が10万円を超えた場合に対象となります。
支払った医療費の合計金額から保険金や給付金などで補填された金額と10万円を引いた金額が医療費控除の対象金額です。その金額を課税所得から控除することができ、上限は200万円となります。
ただし年間の総所得が200万円未満の場合、医療費の合計金額から総所得の5%を引いた金額が医療費控除の対象となります。
セルフメディケーション税制
先ほど年間の医療費が10万円を超えた場合に医療費控除の対象となるとご説明しました。しかし、医療費の合計金額が年間で10万円もいかない・・という方も多いのではないでしょうか。
そんな方はセルフメディケーション税制という制度を検討してみて下さい。セルフメディケーション税制とは、2017年に始まった制度で、病院を受診していない場合でも、薬局などで販売されている市販薬の購入費用が医療費控除の対象となる制度です。
年間12,000円を超える場合に適用
セルフメディケーション税制は、市販薬の購入費用の12,000円を超えた金額が対象となり、上限は年間88,000円となります。
通常の医療費控除と比較して、対象金額のハードルは下がりますが、上限金額が低く設定されているのが特徴となります。
適用条件
健康の保持増進への取り組みを行っている方が対象となり、予防接種や健康診断を受けていないとセルフメディケーション税制を適用することはできません。
また医療費控除と併用することはできないので注意しましょう。
どんな市販薬が控除の対象になっているのか
薬局などで販売されている市販薬全てがセルフメディケーション税制の対象となるわけではありません。対象になるのは、スイッチOTC医薬品と呼ばれる市販薬に限られます。
スイッチOTC医薬品なんて聞いたことないし、見分け方が分からない・・という方は、市販薬のパッケージや購入した際のレシートを確認してみて下さい。「セルフメディケーション税控除対象」のマークがあればセルフメディケーション税制の対象商品となります。
※スイッチOTC医薬品でも「セルフメディケーション税控除対象」のマークが無いものもあります。気になる方は、厚生労働省のWebサイトに「セルフメディケーション税制対象品目一覧」が記載されてますので確認してみて下さい。
まとめ:医療費控除を使って税金を安くしよう
医療費控除は、年間の医療費が一定を超えれば、誰でも使える制度です。
特に年間の医療費がかさんでしまった方や、家族が多い方は、税制メリットが非常に高い節税策となりますので、是非活用してみてください。