【小規模企業共済】早期解約や掛金の変更は注意が必要。掛け捨てや元本割れを起こしてしまうケースについて解説します。

小規模企業共済は、掛金の積み立てを行い続ければ、廃業時や退職時に、元金以上のお金が戻ってくる制度です。
さらに掛金が全額所得控除になるという税制面でのメリットもあります。

このように小規模企業共済はとてもお得な制度となっておりますので、加入を検討しているフリーランス(個人事業主)や中小企業経営者の方は多いのではないでしょうか。

しかし条件によっては、掛け捨て(1円も受け取れない)や元本割れを起こしてしまうケースがあるので、加入する際は、デメリットの部分を理解しておく必要があります。

この記事では、掛け捨てや元本割れなど、せっかく積み立てたお金が目減りしてしまうケースについてご紹介したいと思います。

小規模企業共済の概要については、下記ページで詳しく解説してます。

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自営業者の退職金制度「小規模企業共済」制度の概要とメリット・デメリット

加入期間が短い

小規模企業共済は、フリーランス(個人事業主)や中小企業経営者の方の退職金の積み立て制度なので、長期での加入が前提となります。

そのため、小規模企業共済への加入期間が短いと、掛け捨てや元本割れを起こしてしまう可能性が出てきます。

受け取る共済金の種類によって条件が異なりますので、一つずつ解説していきます。

※説明を分かりやすくするために、対象を個人事業主、法人の役員に絞り、請求事由は一部のみ解説しています。詳細情報に関しましては、共済金(解約手当金)について|小規模企業共済(中小機構)をご確認ください。

共済金A

主に事業を廃業した場合や、契約者本人(個人事業主)が死亡した場合に受け取ることができる共済金です。

お金を受け取るのに必要な納付期間

お金を受け取るのに必要な納付期間は、6ヵ月以上となります。これを下回ると掛け捨ての扱いとなり、1円も受け取ることができないので、注意が必要です。

掛金よりも多く受け取るには

掛金より多く受け取るのに必要な期間は、36ヵ月以上となります。6ヵ月以上36ヵ月未満の場合は、掛金と同額のお金を受け取ることなります。

共済金B

65歳以上で180ヵ月(15年)以上掛け金を納付した場合に受け取ることができる共済金となります。法人の役員であれば、65歳以上で納付期間が180ヵ月(15年)未満でも対象となります。

お金を受け取るのに必要な納付期間

共済金Aと同様、お金を受け取るのに必要な納付期間は、6ヵ月以上となります。これを下回ると掛け捨ての扱いとなり、1円も受け取ることができないので、注意が必要です。

掛金よりも多く受け取るには

こちらも共済金Aと同様、掛金より多く受け取るのに必要な期間は、36ヵ月以上となります。6ヵ月以上36ヵ月未満の場合は、掛金と同額のお金を受け取ることなります。

準共済金

個人事業主の方が法人成り(条件有り)した場合、法人の役員が65歳未満で役員を退任した場合に受け取ることができる共済となります。

お金を受け取るのに必要な納付期間

お金を受け取るのに必要な納付期間は、12ヵ月以上となります。これを下回ると掛け捨ての扱いとなり、1円も受け取ることができないので、注意が必要です。

掛金よりも多く受け取るには

掛金より多く受け取るのに必要な期間は、223ヵ月(18年7ヵ月)以上となります。12ヵ月以上223ヵ月(18年7ヵ月)未満の場合は、掛金と同額のお金を受け取ることなります。

早期での任意解約

小規模企業共済を任意で解約する場合や、掛金の納付を12ヵ月以上滞納すると、解約手当金というお金を受け取ることになります。

先ほど解説した共済金に比べて圧倒的に不利な条件となりますので、注意が必要です。

解約手当金

お金を受け取るのに必要な納付期間

お金を受け取るのに必要な納付期間は、12ヵ月以上となります。これを下回ると掛け捨ての扱いとなり、1円も受け取ることができません。

また12ヵ月以上納付していても、240ヵ月(20年)未満の場合は、掛金総額を下回り、元本割れが発生してしまうので、注意が必要です。

掛金よりも多く受け取るには

掛金より多く受け取るのに必要な期間は、246ヵ月(20年7ヵ月)以上となります。

[box04 title=”税制面でのデメリットもある”]解約手当金としてお金を一括で受け取る場合、「一時所得扱い」となります。共済金と比較しても控除額が少なくなりますので、税負担が大きくなります。[/box04]

短期間で掛け金を変更した場合

小規模企業共済は、経営状況に応じて、掛金の増額・減額をできるメリットがあります。

しかしこのメリットが、意外な落とし穴となっています。

小規模企業共済に長期で加入していたとしても、短期間で掛け金の変更をしてしまうと、変更した掛金分が掛け捨てや元本割れになってしまうリスクを伴います。

このような現象が起きてしまう原因は、納付期間のカウント方法にあります。

納付期間=加入年数ではない

例えば、20年間納付して解約手当金を受け取る場合のケースをみていきましょう。

  • 5年間にわたり毎月7万円を納付
  • 5掛金を減額し、その後の15年は毎月5万円を納付

この場合、

60ヵ月(5年間)×7万円=420万円、180ヵ月(15年間)×5万円=900万円で、合計1320万円

が受け取れると思われがちですが、そうではありません。

7万円から5万円に減額した際に、差額の2万円は運用されずに放置されるので、2万円は5年間分しかカウントされません。

つまり、納付期間は下記のようにカウントされます。

  1. 2万円×60ヵ月(5年間)
  2. 5万円×240ヵ月(20年間)

解約手当金で解説した通り、納付期間が20カ月未満は元本割れになりますので、②は掛金が全額戻ってきますが、①は元本割れが発生します。

このように掛金を変更する際は、注意が必要となります。

掛け捨てや元本割れを起こさないためにも、無理のない掛金を設定することをおすすめします。

まとめ

小規模企業共済は、掛金以上のお金が受け取れる、節税対策になるなど、メリットがとても大きいですが、注意しなければならない点もあります。

せっかく積み立てた掛金が、掛け捨てや元本割れになってしまうのは、非常に残念ですよね。

そうならない為にも、早期での解約や掛金の変更には注意するようにしましょう。